【précieux 京都】#17 チーズケーキの有名店が新たな試みにチャレンジ
パパジョンズ六角店=京都市中京区堀之上町115番地

precieux京都

チーズケーキ
ニューヨークチーズケーキ。生地がとてもしっとりしているので包丁で切ることが難しくカットは糸で。撮影のため、プレートに乗せるのも苦労したぐらい。口に含むと、小さな幸せを感じる

  ローソンの「バスチー」が大ヒットするなど、チーズケーキの人気が再興している。つい先日も東京の知人から「京都か大阪にチーズケーキ専門店を開こうと思うけど、どう思う?」と尋ねられた。京都にはパパジョンズがあるから難しいかも、と返信したら「それ、他の人にも言われたんだよね」と戻ってきた。
 パパジョンズはオーナーのチャールズ・ローシェさんが1990年に京都・今出川の同志社大学の傍に開いたニューヨークチーズケーキ専門店だ。開店当時から変わらない味が京都の人に「チーズケーキならあそこ」と、親しまれてきた。今ではテイクアウト店を併設している工房のほかにカフェ3店舗を展開するまでになった。

 定番のニューヨークチーズケーキ(1ピース550円、15cmホールで2,780円)。チーズケーキなるものを初めて食べた時の感動を思いだす、流行とは無縁の懐かしい味。自家製のグラハムクラッカーを敷き、その上に創業以来使い続けているクリームチーズ、サワークリーム、卵、砂糖などを合わせて焼き上げた濃厚でまったりとした生地、さらに砕いたシナモン入りのグラハムクラッカーがトッピングされている。隣の席でコーヒーと楽しんでいた50代の女性は「同志社大学の学生だったころから通っています。無性に食べたくなる時があるんです。1個目はただ夢中で食べてしまい、味わいの余韻が残らず、続けて注文した2個目でやっと味わえる感じ」と言っていた。それほど根強いファンがいる。このほか店には季節限定商品も含め約15種類が並ぶ。

 

パパジョンズ六角店 店内
阪急烏丸駅から徒歩約15分のパパジョンズ六角店

 

看板
看板はチャールズさんの祖父の若い時の写真をモチーフに。店名は父親(パパ)の名前=ジョンから名づけた

 日本の伝統工芸である漆に魅了されたチャールズさんはアメリカから1969年に来日し、恋に落ちた奥さんの美枝子さんを連れて3年後に帰国。「イタリア系の主人の実家は大家族で、いつも食事が終わってから母親のお手製のデザートを楽しんでいました。そういう習慣が無かったので夢中で習いました」と美枝子さん。再来日して、1985年にアメリカンフードレストランをオープンし、デザートとして出したのが現在のチーズケーキ。義母のレシピをそのまま再現して美枝子さんが作った。あまりにも人気が出てケーキショップへ転身することに。当時はニューヨークチーズケーキとエスプレッソコーヒーの組み合わせは斬新で、1つ350円という価格にもかかわらず、瞬く間に人気が口コミで広がった。

 

COCONO「箱庭」
COCONO「箱庭」。芝生、石畳などがモチーフに。デザインは人気アパレルブランド「SOU・SOU」に協力してもらった

 

チャールズさんと奥さんの美枝子さん
「どんなに苦しい時でも、材料の質は落としませんでした」と話すオーナーのチャールズさんと、利発な奥さんの美枝子さん

 新商品のニューヨークチーズケーキに9種類のムースを加えたCOCONO「箱庭」(1箱4,500円)。30年を経て、今こそ「日本」「京都」をチーズケーキに反映させたい、というチャールズさんの思いを実現した。職人たちと協力して数えきれないほどの試作を重ねること1年半。四角い紙箱にチョコミント、オレンジと紅茶などチーズケーキをベースにした9種類の味のムースデザートがやっと誕生した。環境を考えて5×5×4cmの紙カップに入れ、パーティーなどで気軽に食べられるようにした。「今まで、ずっと味も形も店の構えもあえて日本を意識せずニューヨークテイストをつらぬいてきました。ケーキ作りも同じことを誠実に繰り返してきました。けれども、不安定な時代の今だからこそ新しい事に挑戦したくなったのです」と言う2人は、COCONO「箱庭」の最初の販売をクラウドファンディングにした。宣伝もマーケティングも何もしてこなかったので、新しい告知の方法を選んだのだ。
 チャールズさん、70歳。京都で守ってきたものを大切に、新たな一歩を踏み出した。

 

※価格はすべて税別
店舗での販売は11月末を予定している。
現在は以下のクラウドファンディング「Makuake」にて先行販売を受け付け中(〜2019年10月11日)。
https://www.makuake.com/project/papajons/

 

※パパジョンズ六角店
〒604-0000 京都市中京区堀之上町115番地
TEL:075-211-1600 営業時間は10時30分〜20時 第3火曜日休み
http://www.papajons.net/

 


◆Writing / 澤 有紗

著述家、文化コーディネーター、QOL文化総合研究所(京都市上京区)所長。

京都、文化、芸術、美容、旅や食などなどをテーマに雑誌・企業媒体誌などの編集・執筆を担当するほか、エッセイなどを寄稿。テレビ番組や出版のコーディネート、国内外の企業の京都、滋賀のアテンドも担当。万博の日本館にて「抗加齢と日本食」をテーマに食部門をプロデュースするなど、国内外での文化催事も手掛ける。コンテンツを軸に日本の職人の技や日本食などの日本文化を「経済価値に変える」「維持継承する」ことを目的に、コーディネート活動を行っている。

主催イベントとして、日本文化を考える「Feel ! 日本 -日本を感じよう-」と、自分を見つめ直しQOLを高める「Feel ! 自分-QOL Terakoya Movement ? 」を定期開催。
https://www.qol-777.com

 

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